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新しい教養教育の取組み:学生の能力・興味に合わせて意欲的に取り組める英語教育

教養教育国際教育部門 水野真理子准教授、山岸倫子准教授

富山大学では、令和3年度から外部テスト(TOEIC)が導入されました。これに加えて、令和4年度から教養英語カリキュラムが大きく変わります。その概要についてインタビューしました。

Q. 教養英語の科目名称が「英語リテラシーI・II」と「英語コミュニケーションI・II」から「基盤英語I・II」「ESPI・II」に変わりました。科目名称変更の経緯と、新カリキュラムの科目について教えてください。

A. 富山大学における教養英語は4科目4単位必修で成り立っています。令和3年度までのカリキュラムでは「英語リテラシーI・II」「英語コミュニケーションI・II」という科目が展開されていましたが、科目の目的をより明確にすることや、学生の興味・関心を通した英語学習を促進することを目的として新カリキュラムの検討を行った結果、科目名称を一新することになりました。
令和4年度の1年生からは、前期には「基盤英語I」と「ESP I」、後期には「基盤英語II」と「ESP II」という新しい科目を履修してもらいます。「ESP」は“English for Specific Purposes”の略です。前後期を通して、「基盤英語」ではTOEICのスコアアップを目指し、「ESP」ではより幅広い英語力を身につけてもらいたいと考えています。

各科目の「ねらいと位置づけ」
前期 後期
基盤英語I (習熟度別クラス) 基盤英語II (習熟度別クラス)
専門課程での学修や卒業後の進路に資する基盤的な英語力を養うために、英語能力テストとして広く活用されているTOEICのスコア向上を目指す。また、e-learning教材の活用により自律的な英語学習の習慣を身につける。 専門課程での学修や卒業後の進路に資する基盤的な英語力を養うために、英語能力テストとして広く活用されているTOEICのさらなるスコア向上を目指す。また、e-learning教材の活用により自律的な英語学習の習慣を確立する。
ESP I (習熟度別クラス) ESP II (選択必修クラス)
英語によるコミュニケーションに積極的に参加するためのインプットおよびアウトプット能力の向上を目指し、グローバル化する社会に対応しうる基礎的な英語力を養う。 英語によるコミュニケーションに積極的に参加するためのインプットおよびアウトプット能力の確立を目指し、グローバル化する社会に対応しうる英語力を強化する。

Q. 令和3年度から、新1年生全員が、年に2回、TOEIC-IPを受験することになりました。このTOEIC-IP受験と新カリキュラムはどのように関連していますか?

A. 新1年生の皆さんは、全員、大学の方針として、4月と1月にTOEIC-IPを受験することになっています。受験料は無料です。4月と1月に受験することで、大学初年次の自分の英語力の伸びを客観的に測ることができるので、皆さんの英語学習における一つの指針として役立ててください。
新カリキュラムにおける「基盤英語I」(前期科目)では、各自の4月のスコアを参考に、自分のレベルに合ったe-learningのTOEIC対策コースを選択して取り組んでもらいます。取り組み状況は成績に反映されますので、頑張って学習を進めてください。「基盤英語II」(後期科目)では、1月のTOEIC-IPのスコアが成績に反映されます。引き続き、授業及びe-learningシステムを通して、TOEICスコアアップに向けた勉強に取り組んでください。

Q. 「基盤英語I」「基盤英語II」「ESP I」の3科目はレベル別(習熟度別)クラスとなっていますが、クラス分けはどのようにされますか。また、留学を視野に入れたクラスもあるということですが、その概要を教えてください。

習熟度別クラスのレベル
Study Abroad 1
Study Abroad 2
Standard 1
Standard 2
Standard 3

A. 習熟度別クラスは、大学入学共通テスト(英語)の結果によりクラス分けが行われます。共通テストを受験していない新入生には、別途、習熟度を測るための個別試験を行います。
習熟度別クラスは、右に示した5つのレベルに分かれています。Study Abroadレベルのクラスは、大学時代に留学を経験することで幅広い視野を身につけた学生を育てたい、という大学の方針を受けて設置されました。このクラスでは、海外の大学でも講義を受講することができるレベルの英語力を身につけることを目標に、英語学習に取り組んでもらいます。Standardレベルのクラスでは、日本の大学生としてふさわしいレベルの英語力を、総合的に伸ばすことを目標として学習を進めていきます。

Q. 後期開講の「ESP II」はテーマ別クラスで、学生が各々の興味に従ってクラスを選択できるということですが、どのようなテーマがあるのでしょうか。また、特に履修希望者が多いクラスについては、抽選になるのでしょうか。

A. プレゼンテーションやリスニングなど、英語スキルの向上をテーマにするクラスもありますし、文化、芸術、科学、医療といった特定のトピックをテーマとするクラスもあります。また、学部の専門科目を主に担当している先生方が開講するクラスもあり、そちらでは、より高い専門性を持ったトピックを、英語で勉強することができます。いずれのクラスにおいても、自分の興味・関心を通して英語に触れることで、英語学習の楽しさを知ってもらいたいと思っています。クラス分けについてですが、履修希望者が多いクラスは抽選となる予定です。

Q. 富山大学で教養英語カリキュラムの改革が進められてきたのは、当然ながら、学生にとって英語が重要であると位置づけられているからだと思います。英語の重要性について、学生に伝えておきたいことを聞かせてください。

A. もしかすると、これまであまり英語を実際に使う機会がなく、その必要性を実感できないでいる学生さんもいるかもしれません。しかし、「英語は世界の共通語」というフレーズは、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。全世界において、実用に耐えうるレベルで英語を話せる人は4人に1人いると言われています。また、今や私たちの生活に欠かすことができないインターネット上でも、英語で書かれたウェブサイトは、全体の6割以上を占めています。そして、英語話者の数は、これからもどんどん増え続けると言われています。
こういった世界の状況に加え、英語を使えることの重要性は、コロナ禍で加速度的に高まっているように思われます。国から国への物理的移動が制限される一方で、インターネットを介したコミュニケーション方法が急速に発達し、洗練されたことにより、ある意味、誰もが容易に国境を越えられるようになったからです。コロナ禍が終息した後も、この流れが逆行することはないでしょう。つまり、英語でコミュニケーションをとることを求められる機会が、これまでよりもずっと日常的に、そして身近なものになるわけです。学生の皆さんには、そのような機会にも柔軟に対応できるような英語力を磨いてもらいたいと思います。

Q. 英語を身につけるためには、1年次の教養英語を通した学習だけではなく、その後の継続的な学習も重要です。大学4年間を通して英語力を身に付けるために、どのように勉強すればよいでしょうか。心構えなど、学生に伝えておきたいことはありますか。

A. 新カリキュラムにおいては、TOEICに関連した学習を通して自律的な学習習慣を身につけることと、自身の興味・関心を通して英語を学ぶ楽しさを知ることの二つを重要視しています。2年次以降も、学生の皆さんには、教養英語科目を通して得た学習習慣や達成感を忘れず、楽しみながら、継続的に英語力を高める努力をしてもらえたらと考えています。